長男を授かるまで、仕事に明け暮れ、終電で帰宅続きの30歳代半ばだった。
育児指導書によると、1歳少し前から「カミカミ期」という離乳食完了期に入り、奥の歯ぐきを使って食べ物を噛む練習をさせる時期だという。これまでロクな料理をしてこなかった身には、どうすればよいか分からない。
とりあえず、市販のホットケーキミックスの中に、冷蔵庫の中の野菜を刻んだものや、高野豆腐をおろしたり、煮干しを粉末状にしたものを加え混ぜた上、一切の調味料を加えずに「焼いたもの」を与えてみた。
すると、あまりにバグバグ食べ始めるので、こちらも面白くなり、家の中だけでなく、「焼いたもの」を密閉容器にすし詰めにして持ち歩き、屋外でも与えることとした。
エプロンポケットの中にボロボロと多くの食べこぼしをしながら、手掴みでガツガツと自分の口の中に次々と押し込んでいく姿に、周りの赤ちゃんやママがフリーズしていたことを思いだす。
そんな毎日が過ぎていくうちに、ふと市販のホットケーキミックス粉の香料や着色料等の原料が気になり始めた。ん?よく分からないけれど、どんなホットケーキミックスも同様のキツメのにおいと味がする。
心配が膨らみ、自然食品店に行き自分で調合してみようかと思う。
ところが、ベビーカーとおむつと離乳食とミルクを抱えて、小さな自然食品店には入りにくい。そんな経験から、ウルトラミックスを作ってみたいな、と思ったのだった。
希少な国産(北海道産)バターミルク入りパンケーキ
欧米では、バターミルクという、バター製造時の副産物を焼き菓子原料に加えると、コクがありしっとりとした深いおいしさが出るという。
日本国内には無いのかな?
歩き出してイヤイヤ期真っ只中の息子を抱っこしながら、企業を歩き回った。
運よく話を聞いてくれた企業の方との打合せの最中に、応接室の飾り物をすべて倒した挙句、自ら大声で泣き出したり、ボールペンでソファに独創的な絵を書き出したり、喫茶店の店内の他のテーブル卓上紙ナプキンを次々放り投げながら歩き回ったり・・・・。
多くの方々にご迷惑をお掛けしたが、営業の方から「国産(北海道産)バターミルクが手に入るよ」でも「製造量が少ないので、大手さんには回せないんだ」との朗報が入った。
そうして開発が始まり、2006年 北海道産バターミルク入りパンケーキミックス ウルトラミックスが誕生。
確かにしっとりとしている、もちもちしている。飲み物がなくても、すっと食べられる。
フライパンに生地を流した途端に、香ばしいバターのかおりが鼻をつく。
何度も何度も試作品をテストしながら、味と焼き上がりの調整をした。
料理下手の私にも、失敗しないホットケーキが焼けるように。
香料や着色料不使用なので、小麦本来の味って、こんな風だったんだー、本物のバターのかおりってたまらなくいいねー、とママ友達は言ってくれた。
パッケージは、息子の顔を大きく描くことにした。